退職は明らかに無駄なコスト (ピープルウェア/トム・デマルコ)

退職とその補充に関わるコストは経理上は表面に表れません(せいぜい採用に掛かる費用程度です)が、実際には実に多くのコストが掛かります
 
『新人は最初全く役に立たないし、ひどい場合は足を引っ張る。誰かがその新人の仕事を軌道に乗せるために余計な時間を費やすからだ。』

工場のライン作業やパートでこなせる簡易な軽作業であれば別かもしれませんが、いわゆる知識労働者においては、初日から仕事が出来るなんて事はありえません。
デザイナーやプログラマーなどのクリエイティブな業務はもちろん、営業やその他の業務でもです。

ビギナーズラックで初日から契約が取れた、なんてことはあっても、転職していきなり避妊具の訪問販売で何千万も売り上げてくるような金太郎のような人間はマンガやラノベなどのフィクションの中にしか存在しないのです。 

閑話休題
 
新人の育成コストは研修や教育の体制を整えることで多少は圧縮することが出来ますが、ゼロには出来ません。
例えその新人が経験者であってもです。
経験者の中途採用の場合も、企業毎に文化が異なるため、まったくの初心者ほどではないにしろ、仕事が出来るようになるまでには時間がかかります。

そして、その新人(中途入社を含む)を教育するためには、教育・指導を担当するスタッフ(既存社員)の生産性を犠牲にしなければなりません。

成績を維持したまま新人を教育しろなどと無茶振りする上司がいたりすると、指導スタッフのモチベーションにまで影響を与えかねません。
当然、生産性はさらに低下することになります。知識労働においてはこの傾向がより顕著になります。

本書では新人が一人前になるまで大体5ヶ月、人件費にして3ヶ月分と書かれています。
私が最初にこの本を読んだのは学生の頃ですが、その後の勤務時代や起業後の私の経験からも、大体そんなものだと感じています。
おそらく、どの業種でも概ね似たり寄ったりではないかと思います。

もっと悪いことには、仮に病気やあるいは結婚、引越しなどの正当な理由があっても、退職は退職者以外の職場のスタッフ全員のモチベーションを下げてしまうのです。
離職率が高いと企業文化が根付かず、社内の士気やモチベーションも慢性的に低い状態に陥ります。

つまり、離職率の高い会社は、極めて採算性の悪い会社と言わざるを得ません。

離職率が低くなれば、採用や研修にかかる経費が削減でき、生産性の向上による利益の改善も見込めます。
従業員を減らすのではなく離職者を減らすことが本当の意味で経費削減に繋がるのです。

個人事業であれば別ですが、組織として10年続く会社を作るためには、離職率の問題は避けて通れない課題です。

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